「外国人問題」を争点にしたのは、「試験の前夜に部屋の掃除をしたくなる」ような心理では?

試験前夜、あなたは机に向かって集中して勉強しています

勉強が一段落して少し休憩でもしようかと思ったとき、ふと、部屋の様子が気になりだします。

(あれ、なんだか部屋が汚くないか?)

とりあえず、部屋の床に散らばっているものを片付けようと床に座ると、どんどんどんどん部屋の汚れが気になり始め、あなたは勉強そっちのけで掃除にのめり込んでいきます……

2025年夏の参議院選挙の争点として急浮上したのは「外国人問題」でした。外国人が不法に滞在したままになっていることの問題、移民による犯罪での治安の悪化、外国人による土地の取得などが問題とされ、ネットの空間では「外国人をなんとかしろ!」が果敢に叫ばれています

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「不法に滞在している奴らを帰国させろ!」とか「外国人の犯罪を警察は取り締まれ!」という意見には「そうですね」と返答するしかありません。というか、「すでにやってる」という状態だと思います。犯罪者をすべて捕まえることが不可能なように、グローバリズムが進んで国境を超えて人やサービスが行き来するようになった今、「外国人問題」を完璧に解決することは難しいでしょう。ネットで一部の事例が虫眼鏡のように拡大されて、あたかも日本全体で起きているかのような印象が作られている、のが実情だと思います

「外国人問題」が争点になったことの懸念は、「外国人問題を解決させたとして、国の問題の本質が解決するわけではない」ということにあると思います。「外国人問題」ってネットで熱狂している人たちが思っているよりずっと「しょぼい」問題です。それこそ「選択的夫婦別姓問題」と同じぐらい「しょぼい」。なぜなら、それが解決したとして日本の経済の成長が停滞していることや、少子高齢化による社会保障費の増大、国際的な秩序の維持などの本当に対処しなければならない喫緊の課題にコミットできるわけではないからです

その意味で、「外国人政策」って冒頭に掲げた「試験の前夜に部屋の掃除をしたくなる」心理と同じなんじゃないかな、と思います。結局、目の前の解決しにくい重要な課題から逃げて、他の問題に逃避しているように見えます

心理学的には「セルフ・ハンディキャッピング」と呼ばれる事象のようです。「掃除してたから」という言い訳を残しておくことで、テストの結果がよくなかったことのショックの予防線を張っている状態だとか

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自分の仮説が正しければ、このあとにやってくるのは「日本がうまくいかなかったのは、外国のせいだ」という責任転嫁のフェーズが来ます。つくづく不毛だと思うのは、その主張が耳障りがよく、興味を引く意見である割に、達成したとしても社会が大幅に良くなるわけではないということです。外国人問題が経済成長や社会保障に与えている影響は極めて限定的なものです

経済が停滞している原因を探って行き着くのは、「産業の転換に失敗したことにより、より付加価値が高い新たな企業を作ることができなかった」という事実でしょうし、社会保障費が増大しつづけているのは「日本人が子どもを産まなくなったことにより、年齢別に見た人口比がいびつになり、支える側の人口より支えられる側の人口が多くなったから」という事実によるものです

結局、これらの問題に対する解決策を政治が提供できなければ何も変わらないと思うのですが、外国人問題の解決はそこに寄与してくれません。経済成長鈍化や少子高齢化問題はいつまでもずっと残り続けている問題なので慣れてしまって刺激が少ないのでしょうか。海外から来た人が日本に来て好き勝手やっている映像はセンセーショナルですからね

外国人問題が争点化されすぎて、「参政党」vs「その他政党」みたいな構図になっているのも良くないと思います。参政党って別に外国人問題に熱心に取り組んでいる政党ではなく(自分の記憶が正しければ)「農業」「教育」「防衛」の三つの柱でやっていくというマイルドな主張の政党ではなかったでしたっけ? 報道のためか、あるいはSNSの煽りを受けてなのか変な感じに先鋭化してしまっているように思います。歪な成功体験で変な方向に進まないでほしいですが……

参政党に対する過剰な抵抗感から立憲民主党や共産党は自民党そっちのけで参政党を敵視していますが、それもそれで「どうなの……?」と思います。先輩政党なのだから他党に対する批判ではなく、これまでの実績をアピールしたり、これから何を実現するかを言ってほしいです

今回の参院選で可愛そうだなと思う政党は「日本維新の会」と「れいわ新選組」です

「日本維新の会」は社会保障費の削減を前面に打ち出して、日本が抱える本質的な問題に大きく切り込みました。公約を見たときに「おっ、勇気あるな!」と思ったのですが影薄いですね。社会に与えるインパクトを考えればこの人たちの主張のほうが参政党の主張なんかよりよっぽど過激なんですけど……

「れいわ新選組」は以前からずっと消費税の減税を訴え続けていました。ですが、今回の参院選ではほぼすべての政党が消費税減税(あるいはそれに相当するもの)を訴えているために主張が打ち消されてしまっています。MMT理論は完全に間違っていると思う自分ですが、消費税減税をしつこく言いつづけて世に広めた功績はもっと評価されてもいいんじゃないかなと感じます

「外国人問題」という矮小な問題がオールドメディア、SNS含む様々なメディアで拡散されてしまったために、大きな問題が見逃されてしまっていると感じる参院選投開票日前日の所感でした

お米高くなったよ問題が6月ごろに盛んに取り上げられていたので、せめて「農業をどうしていくか」ぐらいが争点になってほしかったですね。うーん、なんかちょっと残念な参院選です