男でも30歳からの婚活はもう手遅れ!? 『未婚化する日本: ペアーズ共同調査と統計データが示すその傾向と対策』

将来は結婚して、平凡で明るい家庭を築きたいと思っている俺ですが、先日とある本を読んで衝撃を受けました。

その名も『未婚化する日本: ペアーズ共同調査と統計データが示すその傾向と対策』。マッチングアプリ、Pairsを運営している株式会社エウレカニッセイ基礎研究所が共同で行った調査の内容を元に現在の日本で少子化がどのように起きているのかとその原因についてまとめた本です。

著者は日本生命保険シンクタンクであるニッセイ基礎研究所に研究者として勤務する天野馨南子(あまのかなこ)先生。少子化問題や過疎化問題などを専門に調査を行っている方だそうです。

www.nli-research.co.jp

前述したペアーズの運営会社との調査を中心にまとめられている本なので、単行本と言うより論文に近いような感じの本となっています。

本書の内容をざっくりまとめてしまうと……

少子化の原因は女性の社会進出が原因でも若者の経済的な貧困にあるのでもなく、婚姻数が減っていることに由来するものである。婚姻数が減っているのは、職場や地域のコミュニティが男女の出会いの場として成立しなくなってしまったことが原因だ。なので婚姻数を増加させるためには企業が福利厚生として社員にマッチングアプリの活用を促進させたり、地方行政が男女の出会いの場を提供する機会を積極的に作っていくことが重要だ。

といったところでしょうか。

本書の後半ではマッチングアプリや地方行政サービスを使って結婚までこぎつけたカップルの体験談がいくつか紹介されているのですが、その部分はポジショントーク的な印象を受けました。Pairsの宣伝につきあわされているような感じです。お見合い文化が消えた現在、男女の出会いの場としてマッチングアプリが有効なのは十分に理解できるのですが、「私達はこんなふうに結婚しました!」みたいな記述を見てしまうと結婚相談所のパンフレットを思い出してなんか胡散臭く感じちゃうんですよね……

それはともかくとして、この本の面白い部分は前半の調査結果に対する天野先生の分析部分にあります。

自分が読んで興味深いと思ったトピックをいくつか紹介していきます。

共働き夫婦の増加と少子化は関連していない

女性の社会進出によって専業主婦が減り、自ら仕事をしながら出産と育児をする女性が増えました。共働き世帯では仕事と育児を両立が難しいために、子供を諦めたり、2人以上の子供を作ろうとしない家庭が増えている……一見するとこれは正しい主張に見えます。ただし、統計的にはこれは誤りであるそうです。2015年の国勢調査の結果を元に、天野先生は以下のように述べています。

子どものいない世帯の割合は、専業主婦世帯では約 34%、共働き世帯では約 32%と、わずかな差ではありますが、専業主婦世で子どものいない世帯の割合の方が高くなっています。このことから、「共働き世帯は専業主婦世帯よりも子どもを持たないだろうというのは誤解で、むしろその逆」ということが明確に示されています。

さらに意外だったのは、子どもがいる世帯での子どもの数です…(中略)…子どもがいる専業主婦世帯の49%、つまり2世帯に1世帯において子どもが1人という結果が出ているのです。子どもが2人いる世帯は40%、3人いる世帯は10%といずれも一人っ子世帯の割合を下回っています。一方、子どもがいる共働き世帯で一番多いのは、子どもが2人いる世帯で、その割合は44%です。子供が1人いる世帯は42%、3人いる世帯は12%となっています。

要するに、共働き世帯と専業主婦の世帯では子供がいる割合に大差はなく、むしろ共働き世帯のほうが子供の数は多い傾向にあるということです。

また、OECDが1970年代に行った調査では女性の社会進出と出生率の間に負の相関が見られていたそうですが、2000年代に入ってからは正の相関に転じたという結果が脚注に書かれています。

女性の社会進出が少子化対策のネックとなっている、のような説はちょくちょく見かけますが、現在ではあんまり関係ないみたいですね。びっくりです。

男性は年収や容姿を求められていると思いすぎていて、女性は家事ができることを過大評価している

結婚相談所や婚活の話題になるとSNS等ではたびたび話題になる年収問題。女性ってお金を持っている男性が好きなんでしょ? 結局は年収なんでしょ?

ただし、本書で紹介されている調査の結果では男性が思っているほど女性は結婚に「年収」「容姿」を重視しているわけではないことが明らかになっています。実際に女性が男性に求めているのは「性格(価値観の一致)」と「誠実さ」であり、この点においてミスマッチが起きているようです。

女性側にも自分が求められていると思っていることと相手が求めていることの差があるらしく、それは「家事ができること」。女性は「家事ができること」を男性から求められていると思っていますが、男性はあまり家事を重要な要素として認識していないようです。男性が求めているのは「性格(価値観の一致)」と「愛情」らしいです。愛情ってなんやねん。男性の「誠実さ」と対応するものが女性の「愛情」なのかもしれません。

高収入かどうかを気にする女性というのはたびたび話題に挙げられてあたかも女性の総意であるかのような説が敷衍していますが、これは一部にそういう女性の意見が悪目立ちしているというのが実態で現実的には多くの女性は年収に対するこだわりはそこまでないようですね。

未婚のままでいる人の特徴として、相手に求めることが多く、(男性の場合)自分より年下の相手を求めすぎている、という傾向があるようです。こんなこと調査しなくてもちょっと考えてみればわかりそうなものですが、データを元に改めて言われるとドキッとします。

男性の初婚年齢のピークは27歳

読んでいて一番衝撃的だったのがこれ。男の婚活はあんまり年齢気にしないでもいいと思っていたので本当に驚きました。

現在27歳の自分もいちおう婚活しているのですが、30代になっても男ならまだ相手は見つかるだろうとなんとなく思っており、あんまり本気で活動していませんでした。そういう人多いんじゃないでしょうか。

ですが、天野先生は「それではいけない!」と言っています。

男は30歳以降でも相手見つけられるのでは? 確かに、男性の平均結婚年齢は31.2歳(2019年調べ)です。ただ、これはあくまで平均値であり、結婚年齢のピーク(最頻値)は27歳なのだそう。

平均というのは母体となるデータの合計を総数で割り算して得られる数値です。そのため、データの分布に偏りがない場合は実態に近い数字が得られますが、データの分布に偏りがある場合は、現実をうまく反映していない数字が出てしまいます。

例えば、人口100人の国があったとして、20歳で結婚している人が70人、50歳で結婚している人が30人だったとします。

この国の平均結婚年齢は29歳になるわけですが、個別のデータを見てみると29歳で結婚している人は1人もいないという平均と現実の奇妙なズレが生じていることがわかるでしょう。なので、平均のみを見てしまうとまだ25歳だから自分は婚期を逃していない、という思い込みを持った人が現れてしまいます。実際にはこの人は下位30%に所属しているのにもかかわらず、です。

もちろん、これは例示として俺が設定した勝手なデータですので現実はここまで極端にはなっていません。ですが、現在の少子高齢化社会ではこれと似たような状態が起きやすいと言えます。

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なぜならば、上の人口のピラミッド見てもらえれば直感的にわかると思いますが、若い世代の人口に対して40代、50代の人口が多いからです。

つまり、40代以降に初婚を迎える男の人の割合が少ないとしても、40代以降の世代の絶対数が多いために婚姻件数だけ見て若い世代のそれと比べると、相対的に件数が多くなり平均に与えるインパクトが多くなるのです。

実際には27歳の時点で、結婚する男性の7割は結婚を迎えているのだそう。平均だけ見ると31歳でも結婚していない男の人が割といるように見えてしまいますが、実際にはほとんどいない……どころか結婚する人の中では少数派になってしまっているのだとか。

なんとも怖い話です。27歳の今、このデータに出会うことができてよかったと思います……。

ちなみに結婚する女性で一番件数が多い年齢は26歳。平均の値である29に比べると3歳のズレがあります。30過ぎると女性は結婚が難しくなるというのは平均だけ見てもそうなのですが、最頻値を見るとさらにその傾向が強く見られます。

若い男は焦れ!

その他にも女性の高学歴を男性は思ったほど気にしていない、という事実や中年の結婚で成功している男性はほとんど再婚者であり、中年で初婚を迎える男性が年下の女性の心を射止めることは難しい、など面白い主張が展開されています。

ですが、結婚のハックとしては

”若いうちにアプローチをかけまくれ!”

というのが天野さんが見出したセオリーみたいです。

27歳。もう30の壁が見えてきてしまった男ですが、失われつつある若さを武器に婚活を頑張っていきたいと思います、以上!