静岡県に呪われたリニアモーターカー 特級呪物化する公共事業たち

山梨実験線で試験走行を行う改良型L0系950番台 (2020年8月29日 笛吹市にて)

2027年に開業予定とされていたリニア中央新幹線の開業が遅れるという発表がありました

news.yahoo.co.jp

リニア中央新幹線の2027年の開業は遅れるとJR東海が認めました。

リニア中央新幹線をめぐっては静岡工区のトンネル工事で出る地下水が、山梨県と長野県に流れ、大井川の流量が減少する可能性が問題視され着工のめどがたっていません。

JR東海・金子慎社長「静岡工区の着工のめどが立っていないので。ここの工区は難しいし、いまはじめても遅れを取り戻すことができない」

金子慎社長は会見で静岡工区の遅れによって、計画全体に影響が出ているなどと述べました。

JR東海は、9日、初めて2027年の開業は遅れると認めました。

品川から名古屋間の286キロをおよそ40分で結ぶ巨大プロジェクトは、静岡県の理解を得られるめどが立っておらず計画の変更を余儀なくされた形です。

理由は上の記事で述べられている通り、予定されているルートのうち、静岡県を通る部分の工事の目処が立っていないからだそうです

静岡県が工事に反対する主な理由はリニアが通る地下トンネルを作る工事の際に流出する地下水をどうするかについて、工事のあとに残る土砂の処理の方法についてリニア中央新幹線の事業主であるJR東海と合意が取れていないためです

静岡県がリニアの工事に乗り気ではない遠因として静岡県に止まる駅が1つもないことも挙げられます。地元のお金は落とさないくせに、水だけ奪っていきゴミを残していく工事なんて百害あって一利なし。もし、工事によって豊富な水資源を含む南アルプスの自然に取り返しのつかない悪影響が出てしまったら責任を取らされるのは許可を出した静岡県なのですから慎重になるのも頷けます

そもそも、予定されているルートなのですが……
(2027年に開業予定されている東京⇔名古屋間の路線)

静岡県を通る部分はたったの10.7Km。静岡県の異様に発達した角に阻まれてリニアは身動きが取れなくなっています。JR東海の社員たちは静岡県の角をへし折ってやりたいと思っているに違いないです

過去には静岡県を通らないBルートなるルートの案があったそうです。こちらのルートは「静岡の角」を回避して長野県を迂回するルートです

考えるリニア着工 なぜ決まったCルート>(上)JR信じ20年 「約束違う」:東京新聞 TOKYO Web

リニアの計画が出た当時に有力だったのはBルートだそうです。一見すると奇妙なルートですが南アルプスの存在を考慮するとその理由がわかってきます。Bルートは南アルプスにトンネルを掘らないために作られたルートなのです

ただし、このルートを通ると長野県を通る箇所が多くなり長野県に停車する駅が複数駅になるので不公平だという意見があったそうです。長野県なんぞに自己主張させまいと言う出る杭は打たれる現象が起きました。加えて総距離が長くなるので工事費の問題もありました。ついでに言うなら見栄えの問題もありましょう。なぜ一直線じゃないのか、という審美的な問題です

www.tokyo-np.co.jp

長野県はもちろんBルートを望んでいて、JR東海も現実的にはBルートかな……という流れで話が進んでいました。しかし、JR東海は東海北陸自動車道「飛騨トンネル」の成功を見て南アルプスのトンネル工事が技術的に可能だと判断するや否やすぐに現在採択されているCルートに切り替えます

Cルートになるなんて聞いていなかった長野県にしてみれば寝耳に水です。「夢の乗り物が来て、長野県が活性化する!」と喜んでいた県民からすれば、屈辱だったに違いありません

強引にCルートに決めてJR東海が逃げ切ったかと思えば、そうでもなく、Cルートで通ることになる静岡県に阻まれている現状。なんかぐだぐだだな、この計画……

JR東海による中央新幹線の計画は1970年ごろから始まっているそうです。当初の計画が始まってから半世紀超。SNSでは静岡県知事の川勝平太さんが工事の許可を出さないことに対して「意地になっている」「頑固だ」という意見が見られますが、本当に頑固なのはなんとしてでも中央新幹線を通したいJR東海の方なのかもしれないですね

個人的な意見を述べるなら、自分はリニアモーターカーに対する期待というものがほぼないので勝手にやってくれという立場です。メディアでは「夢の乗り物」と表現されることがありますが言うほど「夢」でしょうか。東京から大阪まで早く行けるっていうことがどれほどすごいことなのかいまいちピンときません。

「中央新幹線ができれば、世界が変わる!」といった類の大言壮語はちょっと空回りしている気がします。東海道新幹線の混雑が解決するのが一番の大きなメリットでしょう

それに、コロナ禍によってリモートで会議できることがバレてしまった今、「出張」に対する需要は減っていますし、ビジネス面での需要も当初計画されていたよりもずっと少なくなってしまっているのではないかと思います

何よりも、こういった何年もかかって達成する類の公共事業に対する幻想というのが薄れてきてしまっているのが今のトレンドではないでしょうか。東京五輪、大阪万博……うんざりです。沖縄の基地移設はデニー知事含む地元の反対でなんかよくわかんないことになってますし、中央新幹線もほぼその類になりかけてます

ちなみに、2027年に開業予定だったのは東京-名古屋間のみ。東京-名古屋間が開通してから名古屋-大阪間の工事が始まります。名古屋-大阪間のルートは三重県、奈良県を通るルートにしたいというのがJR東海の意向ですが、例のごとく「うちらを無視するとは何事だ!」と京都が怒っています

kyoto-linear.com

奈良を通るルートにしないために京都の人たちは奈良県にでっかい「いけず石」でも置くのでしょうか。彼らは自分たちこそが近畿地方における巨大な邪魔者だと気づくのにあと何年かかるんでしょう?

東海道新幹線も、最初は京都を通らない計画だったの?


そうです。東海道新幹線も着工当時は、京都駅に停車する計画ではありませんでした。当時の京都全体が大きく動き、京都駅に停車することになり、その後、「ひかり」も停まることになりました。
2,600万人の方が乗り降りされ、生活や観光面で定着していますが、京都に新幹線が停まっていなかったら、京都はどのような姿になっていたでしょうか。現在の京都の発展があるのは、先人の方々が、京都に新幹線が必要であると訴え続け、それを実現させたからです。リニア中央新幹線についても、京都、近畿、日本の将来を見据え、今こそ、取り組む必要があると考えています。

絶対にリニアを通さない静岡県と絶対にリニアを通したい京都府。JR東海は国にお願いして静岡県と京都府を入れ替えてもらいましょう。これでみんな納得です