『翻訳できない世界のことば』で印象に残った言葉3つ

ある言語でしか共有できない微妙なニュアンスを伴った言葉を紹介する『翻訳できない世界のことば』という本があります。

この本は「ある言語が持つ固有の概念」を綺麗な挿絵と短い解説で紹介するという絵本です。

日本語からも「ぼけっと」「木漏れ日」「積ん読」「わびさび」の4つが選出されています。日本語話者としては「積ん読」だけ、ちょっと仲間はずれな気はしますが……

そんな『翻訳できない世界のことば』で印象に残った言葉を3つ紹介していきます。

Ubuntu(ウブントゥ/ズールー語)

『翻訳できない世界のことば』では「貴方の中に私は私の価値を見出し、私の中に貴方はあなたの価値を見出す」という意味だと書かれています。簡単に言うと「他者への敬意」と言った感じの意味でしょうか。ただし、そんな短いフレーズで言い表してしまうと、Ubuntuが秘めている複雑多様で抽象的な意味が消えてしまうので正確な理解ができなくなってしまいます。

Ubuntuという言葉を聞くとCannonical社によってサポートされているLinuxディストリビューションのほうを思い出す人もいるでしょう。LinuxのOSのUbuntuの由来はここで紹介している"Ubuntu"という言葉に由来するのですが、もともとのUbuntuよりLinuxのOSのUbuntuのほうが有名となってしまいました。Appleって検索するとりんごについてではなくApple社が提供するMaciPhoneに関するページばかりヒットするのと似ています。

ズールー語など微塵も理解できない俺は日本語でUbuntuの意味を知れるサイトはないかと探したのですが、見つかりませんでした。

ただ、英語のWikipediani"Ubuntu Philosophy"というページがあり、ここに結構詳しく書かれています。

en.wikipedia.orgあ

記事中ではUbuntuというのは以下のような意味に英訳されることが多いそうです

・"I am because we are(あなたたちのおかげで私がいる)"

・"humanity towards others(他者に対する人間性)"

・"the belief in a universal bond of sharing that connects all humanity(すべての人間精神が繋がっているという全世界的な絆に関する信念)"

自己という存在の中に世界のすべてが内包されているという汎神論的な考え方を前提とした自然、動物、先祖に対する敬意の念を言い表しているのだと自分は理解しました。難しすぎますね。

Iktsuarpok(イクトゥアルポク/イヌイット語)

だれか来ているのではないかと期待して、何度も何度も外に出てみてみること

だそうです。

イヌイットが住んでいるような氷雪地帯では土地の面積に対する人口の数が少ないのが普通です。日本でも北海道はそんな感じですが、カナダ北部やグリーンランドなどの高緯度地域では北海道の過疎なんて可愛いものなのでしょう。

それ故に、「人と会う」という行為に対する喜びが他の地域に住んでいる人々よりも大きいのだと推測できます。期待を胸に「誰かいないかな」と外に出てみて確認したくなるのもわかります。

俺もブログの記事を書いた後には誰かアクセスしてないかな、と何度も確認したくなりますからね。これも立派な"Iktsuarpok"というわけです。実際に誰も来ていないのが悲しいところですが……。

Akihi(ハワイ語)

だれかに道を教えてもらい、歩き始めたとたん、教わったばかりの方向を忘れたとき『AKIHI』になったと言う。

何ていうか、わかりみが深い言葉です。頭ではわかったと思っているのにいざやろうとすると全くわかっていたはずのことを忘れてしまう。個人的にはあるあるです。

日本語の「ど忘れ」は自分がよく知っていたことを急に忘れてしまう現象のことを指しますが、「Akihi」は「ど忘れ」の時間軸が短いバージョンっていう感じですかね。

教わったことをすぐに忘れてしまう。それって俺が馬鹿なだけでは……? いやいや、少なくともハワイの人たちにはそうではないことがわかってもらえるはずです。Akihiだからセーフ

南の島らしい楽観的な価値観がよく現れている言葉だと思います。忘れてもまた聞けばいいだろ? みたいな意味合いも含まれているのだと勝手に想像しています。

 

今回紹介したのは3つだけですが、他にも数々の面白い世界の言葉が紹介されています。言葉の世界は広大ですね。自分は電子版で購入してしまって後悔したクチなので買う場合は本での購入をおすすめします。