少子化というより合理化と呼ぶべきでは? 考えれば考えるほど子供の数が減っていくのが真っ当である理由

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少子化が続いています。今年の出生数の見込みは70万人前後になるそうです

2年半前ぐらいに書いた記事ではコロナの自粛のために妊娠届の提出件数が87万人まで減っているというニュースについて書いたのが懐かしいです

shigorox.net

この記事の先頭に貼り付けた動画は2年半前と同じくテレ東Bizのものですが、コメント欄の反応は2年半前の動画に比べてヤケクソじみたものが多くなっています

↓2021/05/26の動画(『2020年の妊娠届最少 コロナ禍で少子化加速』)のコメント

↓2023/11/08の動画(『上半期の出生数35万2,000人 前年比4.1%減』)のコメント

2年半前に自分が書いた「お金を配っても少子化ってそんなに解決しないんでは?」という持論はまだ変わっていませんが、政府はお金を配ることすら未だにしていません。いや、してるのかな? 「異次元の少子化対策」という言葉が注目を浴びた時期もありましたが、結局何やってるのかよくわからないです。次元が違うから認知できないのかな?

「少子化なんて解決しねーんだし、どーでもいーぜ!」と日本政府は開き直ったのかもしれません。でも、これはむしろ賢いと思うんですよね。世界人口は増えているわけですからグローバル視点で見れば豊かな国で起きている少子化は人類全体の危機にはなりえないのです。むしろ、住居問題、食糧問題、資源の分配問題などの争いの原因となる問題が生じやすい人口増加のほうが人類にとっては大きなリスクなのです

そもそも、「お金を配る」といってもどのくらいお金を配ればいいのでしょうか。「子供を産んだほうがお得」という状態に持っていくためには単純に考えて、「子供を育てるコスト」より「子供を産むことで得られる金額」が大きくなればよいです

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上の記事では公立の大学と私立の大学に通わせた場合で費用が分けられており、0歳~22歳までの子供の養育費用が2780万~2900万と書かれています。わかりやすくするために子供一人あたりの「子供を育てるコスト」が2500万円だと仮定しましょう

「子供を育てるコスト」が2500万円なのだから、子供を産んだほうがお得にするためには「子供を産むことで得られる金額」が2500万円以上でなければなりません。20年間に渡り子育て費用を政府が負担するとすれば子供一人につき、1年あたり125万円の補助金が必要になります。子供1人あたり1ヶ月10万円の補助金ですね

仮に、1年あたりの子供の出生数が70万人だとすると、0~1歳児にくばる予算だけで8750億。すでに子供がいる世帯にもお金を配らなければ不公平だと言われますので、総額はその20倍、17.5兆円です

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令和5年度の歳入は約114兆円。この補助金は国家予算の15%程度を占める巨大な予算になるのです。そんな予算、組めるはずもありませんね。というわけで補助金で「子供を産んだほうがお得」な状態にすることは不可能なわけです

もちろん、補助金は「補助」なのだから、別に2500万円全部払う必要はなく、一部の負担でOKという指摘もあると思います。しかし、その場合は一部自己負担になるので子供を産まない方が得であるという状態に変わりがありません。-2500と-1000、±0のどれを選ぶかとわれれば、±0を選ぶのが一番オトクでしょう

以上のことから子育てからロマンチックな部分をすべて排除すると「少子化を解決するために子供を2人以上産んでください」という要請は「共同債務者を見つけてきて2人で協力して20年の間、5000万円以上の借金を返済してください」とお願いしていることと同じことになります。お金が余ってでもいない限り、誰もそんなことしたくありません

となると、経済的に考えて異常なのは子供を作らない人ではなく、子供を作る人のほうです。必要でもないのに自ら負債を背負うなんてどうかしてますね。彼らは合理的な選択を行っていないのです

そして、そんな経済的な合理性を見えづらくしてきたのが「結婚して、子供を産んで温かい家庭を築くのが普通の人生」という幻想と周囲の圧力なのですが、非婚やDINKsが多くなってきた今、そんな主張は古臭すぎて見向きもされません

少子化に関わる誤りでもっとも根源的な誤りというのは「人は子供を産みたがる」という前提です。この前提に立つと、少子化を解決するためには子供を産むことを阻害する"何か"を取り除けばよいという問題解決方法にたどり着くわけですが、前提が間違っているために意味をなしません

正しい前提は「人は幸福な人生を歩みたいと思っている」というものではないでしょうか。子供はそれを実現するための一つの選択肢に過ぎません。そのオプションの達成難易度が高くて、幸福が別の手段でも手に入るのであれば置き換えが行われます。娯楽が多様化した今、2500万円という大金の使い道として「子供を作る」はコスパが悪すぎるのです

というわけで、社会の参加者が経済的に賢くなればなるほど、子供を作ろうとする選択肢を取る人間が減っていきます。日本含め先進国で起きている少子化はむしろ経済的な合理化と呼ぶべきなのではないでしょうか