おっしゃる通りの安心感 珍獣使いが語る『超ファシリテーション力』

ファシリテーションとは、会議の場で話し合いのかじ取りをしたり、参加者たちの調整を行ったりすることを意味します。

facilitationという言葉は聞きなれない人でもfacility(施設)という言葉なら知っている人は多いんじゃないでしょうか。実はこの2つの言葉は、同一語源の言葉なのです。「場を作ること」と訳されることも多い「ファシリテーション」ですが、これは偶然ではありません。

皆さんは、会議の司会役を行ったことあるでしょうか。誰かが長々としゃべっているのと制止したり、参加者全員が発言できるよう時間配分を考えたりと何かと苦労があるものです。進行がぐだぐだだと、会議に参加してくれている人たちのやる気も下がっていき、意見が全く出てこないなんてこともしばしば。無意味な会議になってしまってせっかく集まってくれた人たちに申し訳ない思いをさせてしまうこともあります。話し合いの指揮をとるのは非常に難しいです。

さて、そんな仕切り能力の権化と呼べるのがニュース番組、アベマプライムで司会を務める平石直之アナウンサー。よくも悪くも個性豊かな参加者たちのいなしながら、討論番組を成立させている名ファシリテーターです。

www.youtube.com

実際に活躍している姿です。会場の空気がやばくなってきたときにスパッと議論をもとに戻している場面が印象的です。平石アナがいなかったら放送事故になっていた回もあったに違いありません。

『超ファシリテーション』はそんな平石アナが実践しているファシリテーションの極意が書かれた貴重な本です。実践経験に基づいた貴重な話がいくつか書かれており、参考になる部分が多かったです。

本書の中でファシリテーションで重要な3つのポイントが述べられています。

  • 準備力
  • 聞く力
  • 場を作る力

事前に準備しておくことと参加者の意見をよく聞いて相手の意図を理解するのは言わずもがなかもしれませんが、「場を作る」という点に自分は興味を持ちました。

ざっくりいってしまうと、「いい雰囲気を作る」こととも言い換えられるのですが、どうやってそれを実現するかを考えると頭をひねってしまいます。

本書では「いい雰囲気」を醸成するためには参加者たちそれぞれが「議論に参加している」意識を作ることが大切だといいます。議論に全く参加していない人を作らないように話を振ってあげたり、逆に一人の参加者がしゃべりすぎているときには早い段階で話をまとめてあげたりなどなど、ファシリテーターは全体を見て、調整役を果たすのが重要です。

当事者意識を高める方法として、相手が言ったことを反復したり、要約したり、同調したりするというテクニックが紹介されています。頷いたり、話の中のキーワードを反復することで、自分の話が伝わっていると思わせることができ、安心感を与えることができるそうです。

そのための魔法のフレーズが「おっしゃる通りですね」。アベマプライムでも平石アナがよく言っています。この言葉は相手の意見を否定せずに、議論のボールをファシリテーターに戻すことができるという点で議論では重宝するセリフなのです。

本書には「今すぐ使える! キラーフレーズ辞典」として議事進行で役に立つキーフレーズ集が付属しています。これを使えば、平石アナになれちゃうんじゃないかと思うほど便利な用語集です。読んだらきっと使いたくなるはず。

そんなこんなで『超ファシリテーション力』。突然、会議の議事進行を任されたりしたときなんかは一回目を通して見るのがおすすめな本でした。