『最強のエンジニアになるための話し方の教科書』という本を読みました。
俺はITエンジニアとしてフルリモートで働いているのですが、リモートワークだといかんせん対面より言葉で説明しなければならないことが多くなってしまい、口下手な自分はいつも困ってしまっていました。
そこで、話し方について解説している本はないかと探し……あった! 『最強のエンジニアになるための話し方の教科書』。最強……なんだかすごそう。
本書の著者は亀山雅司さん。原子力安全推進協会に勤務している技術士の方です。放射線関連の技術は必要以上にネガティブなイメージが持たれていることが多く、他人に技術を説明するという点では最も困難な領域なのではないでしょうか。理論的に安全に設計されていても絶対にクライアントが納得してくれないなんてことよくありそうです。
そんな事情があったのかなかったのかはいざ知らず、亀山先生はエンジニアは技術のみを追求するだけではだめだと悟ります。技術を身に着けたうえでその技術を相手に伝える方法も学ばなければいけないと考えたわけです。そして、技術の新しい伝え方の探求を行い、各地で技術者向けに話し方のパーソナルトレーニング等を開催する活動を始めるに至りました。
(亀山先生が行っているセミナーの体験記です)
『最強のエンジニアになるための話し方の教科書』は亀山先生の理論をもとに具体的なシチュエーションごとにどのように話し方を変えればうまくいくようになるのかが書かれた本です。
本書で繰り返し述べられているのがラポールという概念。ラポールとはフランス語で「橋を架ける」という意味を持つ用語です。転じて心理学では相手と自分の間に「心の橋を架ける」という意味で使用されます。サンポールじゃないですよ。
コミュニケーションがうまくいかないのは、相手と自分の間に架け橋となるものがないのが基本的な原因だと亀山先生は言います。技術の専門家はそうではない人に対して、数値や理論で説得しようとしますが、それだけだと反発を食らって相手は絶対に納得してくれない。相手とうまくやっていくために必要なのは、まず相手と自分の間に共通の何かを作ってそこから話を広げていくべきだと提案しています。
共通点探し、はコミュニケーションにおいては非常に重要だとほかの本でも見たことがあります。人は自分に似ている存在に好感を抱きやすいのだといいます。出身地が同じだったり、おんなじ趣味を持っていることがわかったりするとそれだけで親近感わきますからね。輸血するわけでもないのに「血液型が一緒」だと知ると喜ぶ人がいるぐらいですから、共通点というのはコミュニケーションにおいて強力な架け橋となってくれる道具です。
具体的にどのような話し方の改善策が書かれているかは実際に本を読んでもらうのが一番だと思うので割愛するとして、いくつか印象に残った部分を引用します。
我慢は美徳のように見えても、実は「自分や相手に嘘をついている」状態です。
話が伝わらない相手に対して対立を避けるために敢えて自分の意見を押し殺して相手の意見を受け入れてしまうことは社会生活の中ではままありますがこれはよくないと言っています。
そもそも、我慢というのは仏教に根を持つ用語でポジティブな意味の単語ではありません。我の慢心と書いて我慢ですから、我慢の裏には相手に対する見下しと自分の能力に対する驕りが必ず潜んでいます。
自分も相手も納得した状態で仕事ができるように、技術を適切に伝えるテクニックが必要なのです。
そして、もう一点
エンジニアで嫌われる会話をしている人は、「②話し相手より自分を守ろうとしている」パターンが多いように感じます。…(略)…話し相手が安心を感じて心を開くには、自分を守らない「自爆」の姿勢が重要なのです。
これは正直ぐさっときました。自分を守ろうとするということは暗に相手を拒絶しようとすることを意味していますから、当然、相手はそんな姿勢の人間を受け入れてくれるはずがありません。何の欠点もない完璧な人間より、失敗が多くても自分によく話しかけてくれる人の方が仲良くなれそうな気がしますよね。
よく話すということは自分の至らない点を相手に曝け出すということです。自分の愚かさを相手に理解してもらうことがコミュニケーションの第一歩なのです。
『最強のエンジニアになるための話し方の教科書』。KindleUnlimitedに加入していれば無料で読むことができるので、話し方に悩んでいる方は購入して読んでみてはどうでしょう。