『引き寄せの法則』の嘘の嘘……情報商材屋のエコシステム

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みなさん『引き寄せの法則』ってご存知でしょうか!?

!?!?!?!?!?!

ある程度情報リテラシーが高い方なら記事がこの一文で始まった時点で「こいつ……情報商材売るつもりだ!」と喝破することできることでしょう。「『レターパックで現金送れ』はすべて詐欺」みたいに「『引き寄せの法則』はすべて情報商材(あるいは自己啓発本の紹介)」です

「『引き寄せの法則』は嘘っぱちだ!」ということを前提に、『引き寄せの法則』とは何かざっくりと説明すると、

”強く願えば願った結果が引き寄せられてくる”

という都合のいい解釈のことです

補足としてWikipediaくんによる解説を入れると

引き寄せの法則(ひきよせのほうそく、英: Law of attraction)は、19世紀アメリカ合衆国で始まったキリスト教における一種の異端的宗教・霊性運動の潮流ニューソートにおける、ポジティブな思考が良い経験を、ネガティブな思考が悪い経験を、人生にもたらすという信念であり、科学という視点から見れば疑似科学である

らしいです

ja.wikipedia.org

「信念」「疑似科学」と書かれている通り、実証されているものではありません。いわば幽霊とかツチノコとかと同じ類のもので、存在する証拠はないけど一部の人の間では存在すると信じられているものです。あえて名付けるなら未確認理論とでも言うべきでものでしょうか。多次元空間とか平行世界とかそんな感じのことを含めて考えてみるともしかしたら存在しているかもしれません。信じるか信じないかはあなた次第……

この『引き寄せの法則』が厄介なところは、2つあります

1つは「正しいように感じられる」点

『引き寄せの法則』が正しいと主張する人たちは、成功した人を引き合いに出して「例えば、プロ野球選手の大谷翔平選手はプロ野球選手になりたいと強く願ったからプロ野球選手になれた」のような主張を繰り出します

これは一見正しいように見えます。プロ野球選手は誰でもなれるわけではないですから、なろうとする過程に必ず「プロ野球選手になるぞ!」と思う瞬間があるはずです

ただし、厳密に考えてみると、「プロ野球選手になる人はプロ野球選手になろうと思った人である」という部分は正しいもののその事実は「プロ野球選手になろうと思ったからプロ野球選手になれた」という原因と結果を導きません

ある人がプロ野球選手になれるのは、「野球の試合で良い結果を残したから」というのが正しい原因でしょう。どんなに強く願っても怪我で一回も野球の試合に出れなかった人はプロ野球選手になれません

もちろん、「本当にプロ野球選手になりたい人は体調管理や怪我のリスクのケアを怠っていないからそんなことは起きない」といって反論することは可能です。しかし、すべての病気や自然災害など含めてすべてのリスクを個人でマネージメントできるわけないのですからこの反論は強引です。何かしらの事情で泣く泣く野球をやめざるを得なくなってしまった選手はすべてプロ野球選手になりたいとは思っていなかったのでしょうか

「結果的にプロ野球選手になれた人が強く願った人なのだ」と主張することもできますが、ここまでいくと「結果」を見て「原因」の正しさを判断しているわけですから「1=1」を複雑に言い換えているに過ぎません。「強く願えば願いは叶う」「強く願うとは願いが叶う願い方のことだ」。これでは「願うが叶う願い方をすれば願いは叶う」というトートロジーの文章になってしまいます。進次郎構文ですね

「願う」ことと願いが叶ったことに関連性があるとまでは言うことはできるでしょう。「朝起きたら俺はプロ野球選手になっていた」なんて人いませんからね。この意味で『引き寄せの法則』は正しいです。ただし、それは原因と結果ではなく、「プロ野球選手になった人はプロ野球選手になりたいと願っていたことが多い」という類の相関の関係のものなのです。ここらへんが曖昧になってしまうと『引き寄せの法則』が正しく見えるのでしょう

もう一つの厄介な点は「否定すると呪われる」点。

呪われる、と書きましたが、得られるはずの利益が得られないことも呪われるに入ります

要するに「あなたは『引き寄せの法則』信じないですか!? 成功できないよ!?」という謎のあれです

こういうのは昔流行ったチェーンメールと同じ手法で、受け手に対して間接的に脅迫を行うことでなんとなく否定しずらい空気を作り出しているわけです。ここから「とりえあず信じておいたほうがいいんじゃない?」的なノリに持っていくわけですね

『引き寄せの法則』自体、「夢は必ず叶う!」的なポジティブな考え方に基づくので「根拠ないですよね」って言ってしまうと、しらーっという空気が流れてしまいます。「え? 私の夢、叶わないって言うんですかぁ!!??」……そういうことじゃないんだけど

この流れで「根拠とか教えの内容とかどうでもいいから、とりあえず信じろ」という屁理屈が生まれます。「騙されたと思って行動してみて!」。こういうセリフ言う人って「騙された!」って言うと露骨に不機嫌な顔しますよね

さて、「『引き寄せの法則』はすべて情報商材」なわけですが、これまでつらつら書き連ねてきたようなことを解説してくれている記事を見つけました

you.dreamseeker.net

ふむふむ……読んでみるとなかなか納得の内容です

特に『引き寄せの法則』を信じた人が起こした事件に関しての部分は面白いですね。35時間の断食と蒸気サウナという拷問じみたイベントを参加者から高額なお金を取って開催したのですが、その結果多くの人が体調を崩して死者が出る自体になりました。主催者は大量不良から逃げ出そうとする参加者を保護するどころか、「まだ終わりじゃない」とサウナから出さないようにしたみたいです。映画『ミッドサマー』のラストみたいです

主催者は当然罪を問われたわけですが、裁判ではどのような供述をしたのでしょう?

「こんな事故が起こるとは思わなかった」と述べたのでしょうか。それとも「私が引き寄せました」と述べたのでしょうか

さて、読んでいくと途中でこんな段落が……

本当の引き寄せの法則とは?

あれ……なんか流れ変わったぞ……?

筆者が突然、「本当の引き寄せの法則を見せて挙げましょう」みたいなこと言い始めます。あー『美味しんぼ』でみたことあるやつだぁ

そして、記事の末尾に「行動開始のための7日間のプログラム」という怪しげなプログラムへのリンクが。これは情報商材です

堰を切ったように怪しげな文言が出始めます。曰く、「ライフワーカー」を育てるミッションを遂行中、ポジティブな波動……

というわけで情報商材を売っている人が既存の情報商材を否定して、自分が開発した情報商材を売っているという貴重なものが見れました。営業の人が古い商品のかわりに新しい商品を勧めるように情報商材も刻一刻と新しい商品が作られているのです

情報商材界隈の記事には情報商材売っている人が集まる。これが本当の『引き寄せの法則』ですね