皆さん、文章が書けなくて困ったことありませんか? 俺ははてなブログの編集画面を目の前にしてしょっちゅうフリーズします。毎日書くとは言ってみたものの何か書けばいいのかわからないときが多すぎるのです。いっそのこと、何も書けないことについて書いてみようかと思ってしまうぐらい。
ブログの記事の題材は自分で考えなくちゃどうしようもありませんが、記事の書き方にはセオリーがあるようです。
『才能に頼らない文章術』はそんな文章の書き方について編集者の視点から述べた一冊。
著者の上野郁江先生は翔泳社で編集者としての経験を積んだのち、慶應義塾大学大学院で「システムズエンジニアリング」を学んだ方です。編集者の中で暗黙知となっている文章のスキルを体系的なシステムとしてまとめようと思ったのがこの本の執筆の動機となったようです。
調べてみると、上野先生は編集に関するコンサルティング業務も行っているそうで「エディトリアル・コンサルタント」を名乗っています。関係ないですが、こういう見慣れない横文字を見るとちょっと茶化したくなりますね。
この本の特長は、それぞれのトピックが非常に「具体的」だということです。例えば、一文の長さとして適切な文字数はどれくらいなのか、文章中に登場する符号(!?「」)はどのように使うのかなど、書く人の感性によらない静的な編集スキルがふんだんに盛り込まれています。文章術の本というと、「文章は勢いだ」「言葉は人間だ」などのふわっとした話に終始してしまう本もありますがこの本はその類ではありません。巻頭にチェックシートがあるぐらい、文章を書く上でのポイントが明確に提示されています。
文章のお作法についてはすでに知っていることも多かったですが、文章の構成については知らないことばかりでした。気づくとだらだらと文章を書き連ねてしまう癖のある自分ですから、文章全体の構成を考えたことなんて皆無でした。
構成を身に着ける策の一つとして、少し長い文章を書くときにサブタイトルをつけてみるのが良いらしいです。
サブタイトルを先に書いておくことによって、文章全体の論理構造が明確になり検証が抜け落ちている部分や飛躍している部分などが明確になるのだそう。
とはいえ、自分のブログは1記事が大体2000文字程度しかないからなぁとも思います。サブタイトル1行に対して、文章が3行だったら、なんか間延びした感じになっちゃいます(そんなこと言ってるからいつまでも構成がわからない)。
本書の後半の内容は単なる文章の書き方というよりジャーナリズム寄りの内容になります。筆者は文章を書くための「メディアマインド」も正しい文章の一つであるとして紹介しているのですが、日々てきとーな文章を量産している俺からすると何だか申し訳ない気持ちになってしまいました。
正しい文章を構成する要素として、上野さんは以下の4つの要素を挙げています。
Sincerity… 誠実、正直、偽りのないこと
Accuracy… 正確さ、間違いのないこと
Credibility… 信頼できる文章で書かれていること
Readability… 読みやすい文章で書かれていること
ReadabilityやCredibilityは、文章基礎力、構成力と強いかかわりを持っています。読みやすい文章をかくには文や単語の使い方の知識が必要ですし、信頼できる(≒納得できる)文章を書くためには話の持っていき方である構成の力が問われます。
文章を書いていくことで得られるスキルである上記2つに比べ、AccuracyとSincerityは文章を書くときの姿勢が問われるものです。
個人的にはAccuracyとSincerityは同一のものだと考えています。誠実な文章を書こうと思ったら、事実を根拠として文章を書こうとするでしょう。あいまいな事実を土台にした文章は大抵の場合、何かよからぬ意図があって書かれる文章です。
とはいえ、一番難しいのが誠実さなのかもしれません。誇張した方が面白かったり、嘘ついた方が自分のためになる話っていうのは必ずありますからね。考えが凝り固まっていると悪意はなくとも勝手に自分寄りの考えに話を持って行こうとしてしまうことさえあります。
本書の最後には、日本語版のハフィントンポストの編集長である竹下隆一郎さんへのインタビューやBuzzFeedJapanの編集長、古田大輔さんへの取材が掲載されています。「文章術」という趣旨からは少しはみ出している気もしますが、興味深いインタビューでした。
Kindle Unlimitedに加入していれば無料で読めちまう『才能に頼らない文章術』。お得な本でした。