コロナ禍でFAXの売り上げが上がったあったけぇ話 『海外メディアは見た 不思議の国ニッポン 新しい世界』

faxマークイラスト/無料イラストなら「イラストAC」

クーリエ・ジャポン編集部による『海外メディアは見た 不思議の国ニッポン 新しい世界』を読みました。

本書は海外の記事を日本向けに紹介しているメディア、クーリエ・ジャポンに掲載された「海外から見た日本」というテーマを扱っている記事を厳選してピックアップしたものです。いわば傑作選ですね。

「海外から見た日本」というテーマに関しては一貫しているもののその切り口は様々です。政治のことであったり、労働環境のことであったり、女性問題のことであったり。後半では日本の天皇について海外のメディアがのように報じているのか紹介されている部分がありますが、「アキヒトイズム」なんて言葉を使用できるのは国外のメディアぐらいでしょう。外の人に内輪のタブーは通用しません。

さて、記事によっていろいろな観点から日本が分析されているのですが、一番興味を持ったのは「"ファックス"をやめられない理由 ——ハイテク国の不思議な二面性」という記事です。アメリカの「ワシントン・ポスト」が報じた内容をもとにしています。

内容は、新幹線や人型ロボットなどいくつものハイテク技術を持っているはずの日本が、なぜ枯れた技術であるFAXにこだわるのか、という謎について語ったもの。特に、コロナ禍での集計作業や症例報告などの文書がFAXでやり取りされていたことについてフォーカスがあてられています。

記事内では以下のツイートが引用され、FAXでのやり取りに現場からの疑問の声が届いていることとが伝えられています。

FAXなど一度も触ったことのない俺にとっては、いろいろな意味で仰天の内容でした。フロッピーディスクと同じく絶滅したものだと思っていました。

さらにびっくりなのがコロナ禍でFAXの売り上げが上がっていたという事実

ファックスの売り上げは米国では減少しているが、2019年に日本では6%近く伸びた。政府の調査によると、全世帯の3分の1がまだファックスを所有しているという。

「FAXを新規導入した企業があった」というより、「FAXで運用されている既存のオペレーションの頻度が上がったために追加のFAXが必要になった」という結果だと思いますが(というかそうであってほしい)、それにしても奇妙な結果です。追加のFAX購入に予算が下りるのでしょうか? メールやチャットでのやり取りにした方がコストがかからないうえに便利だと思うのですが……

調べてみると、FAXの利点について書かれた記事がいくつか出てきます。

www.docusign.jp

03plus.net


news.yahoo.co.jp

  • 手軽に送信できる
  • 確実に相手に届く
  • 堅牢なセキュリティ

どこから突っ込んでやろうか……と言いたいところです。

FAXは高齢者にとっては手軽かもしれませんが、若い世代にとってはFAXは手軽な通信手段ではありません。「今度お前んちにFAX送るぜ! やっぱFAXは便利だな!」なんて思う若者、令和の時代にはいません。若い世代の連絡手段はメールやメッセンジャーアプリ、チャットツールなどに切り替わっており、送信機と受信機の操作を覚えなければいけないがFAXよりはるかに手軽です。画像を送りたければ、わざわざ紙に印刷してそれを音に変換して送り付けるなんて手間をとらなくても、直接データが送れる形式で送ればいいのです。

確実に相手に届く=信頼性が高いの根拠は、番号さえ知っていれば確実に送ることができるかららしいです。大味な意見ですね。メールだって同じでしょ、と誰もが思うはず。

また、相手に届いたかどうか確認できる、送信の履歴が見れるのが利点と書いてありますが、これもメールと同じです。後発の技術で生まれた電子メールやチャットツールが前の時代の遺物であるFAXの機能をカバーしていないわけないのです。

セキュリティが高い(!?)と書かれた記事については読者を煙に巻こうとしているきらいすらあります。ローカルネットワークのみで使えるメールサーバーは立てられないかのような書き方をしていますが、これははっきり言って間違っています。その次の根拠として挙げられている「エア・ポケット」に関しても色々と問題がごちゃまぜになっていて、何が言いたいのかはっきりしません。

FAXに脆弱性がある! ……とまでは言いませんが、メールシステムにせよチャットツールにせよセキュリティは十分確保されています。システムの仕組みに慣れていない人たちが運用してしまうことによる人的原因の脆弱性がほとんどでしょう。そういう観点であれば、「FAXを使い慣れた人にとってはFAXのセキュリティは高い」は真実なのかもしれません。

ニッポンの不思議「FAX」。世界的にもまだFAXを使っているところは多いそうですが、行政の現場でこれだけ愛されているのは日本ぐらいではないでしょうか。記事ではハンコ文化と合わせて「人の手が加わった」ものに対する執着がそこにはあると述べられています。時間をかけたものはとにかくあったけぇんです。

ブログの記事も手書きで書けばあったけぇ記事になるんでしょうか。面倒だなとしか思いません。