youtubeにアップロードされている『The Backrooms』という短編ホラー動画を見ました。
再生時間は10分程度で、誰でも無料で見られます。
見てない人はこの記事の続きを見るより先に一回視聴してみることをお勧めします。ホラーは鮮度が命ですから。
ゾンビものに代表されるパニック映画や『貞子』『リング』などのホラーは自分で映画館に行ったり、動画配信サイトに見に行ったりするので心の準備ができているという意味においてお化け屋敷的なところがあります。
一方で、youtubeを巡回していた時にふと出会うこのような動画はホラー映画のような作られたホラーとは少し違って、自然な怖さがあるのがよい点だと思います。もちろん、見てもらった方はわかると思うのですが、純粋な記録映像とは少し違います。『The Backrooms』はハンディカムで撮影された自然を装った映像ですが、冷静に見てみるとカット割りや演出などかなり「人の手が加えられている」感はあります。ただし、youtubeの視聴体験ってかなりパーソナルなものなので、没入感は間違いなくこちらの方が高いです。
『The Backrooms』の怖さの土台は「人工的な無機質な空間」にあると思います。深夜のホテルの廊下をずっとうろうろしていたことはあるでしょうか。あるいは夜遅くに大学の構内を冒険したことは。『The Backrooms』で表現されているのは空間だけがぽっかりと空いていて人間だけがいないという寂しさと不気味さが入り混じった感情です。人はそんなところに閉じ込められると、出口を見つけようとうろうろ徘徊したくなるものなのです。
こういう寂寥感にあふれたホラーって、インターネットと相性がいいと思うんですよね。ネットってにぎやかな印象のある空間ですが、にぎやかなのはTwitterやYoutubeなどの人が集まるサイトの一部コンテンツだけで、俯瞰してみてみると誰にも訪問されない、かつ誰に向けたかわからないようなコンテンツが圧倒的多数を占めているとっても空虚な空間だからです。インターネット黎明期に作られたような個人サイトをたまに見かけるんですが、深夜に一人でスマホ使ってるときに訪問しちゃうと思わずブラウザバックしたくなるような不思議な怖さを覚えます。世界で一人だけしかこのサイトを見ていないという感じがなんか怖いんですよね(このブログも大概かもしれませんが)。
ちなみに、『The Backrooms』はアメリカの大手匿名掲示板4chan発のBackRooms(≒隠し部屋/裏空間)という都市伝説をもとにしているみたいです。
2018年の4月に以下の画像が呪われた画像(cursed image)」のスレッドに投稿されます。
その後、2019年に「不安にさせる画像(disquieting images)」で上記の画像が「BackRoom」というタイトルとともに以下の注釈をつけて紹介されます。
If you're not careful and you noclip out of reality in the wrong areas, you'll end up in the Backrooms, where it's nothing but the stink of old moist carpet, the madness of mono-yellow, the endless background noise of fluorescent lights at maximum hum-buzz, and approximately six hundred million square miles of randomly segmented empty rooms to be trapped in
和訳の自信がないので、そのままぺたっと貼り付けました。英語読める人は原文から意味をくみ取ってください。
自分が理解できる範疇で内容を若干意訳しながら要約すると、「何かの拍子に隠し部屋空間(Backrooms)にたどり着くことがある。そこに入ったら蛍光灯のジーっというノイズだけが響き渡る、古い湿ったカーペットが敷かれた黄一色の空き部屋がランダムに続く空間に閉じ込められることになる」とのことです。
また、この空間には「何か」がうろついているということも続く文章で示唆されています。
その後、Twitter、TikTokでこのBackRoomsが紹介され、今に至るらしいです。掲示板の1投稿が広まっていき、不特定多数の共通幻想と化していく。まさにインターネットの都市伝説だと呼べます。
インターネット初のホラー「BackRooms」。今後、どのような広がりを見せていくのでしょうか? 大注目です。