まずは見てください。
子どものころは何となく聞き流していましたが、改めて聞くと破壊力抜群でした。しゃべってるっていうのか、これ? わめいているっていう表現の方が近いんじゃ……
トゲピーの鳴き声「ちょぎ、ぷりぃぃぃぃ↑↑」ですが、不思議に満ち溢れています。赤ん坊の泣き声に巻き舌使ってるのが斬新すぎます。
アニメ版のポケモンの鳴き声は、ポケモンの名前に由来することがほとんどです。例えばピカチュウの鳴き声は「ピ」「カ」「チュウ」で構成されています。主人公の「サトシ」を呼ぶときは「ピカピ」、力を溜めて10万ボルトを発動するときは「ピ~カ~チューー!」。由来は誰が聞いても明らかに「ピカチュウ」です。
トゲピーの「ちょぎ、ぷりぃぃぃぃ↑↑」はどうでしょうか。確かに「トゲピー」の面影が残っていないわけではありません。イントネーションは「トゲピー」っぽいです。ですが、トゲピーいうワードからこれが出てくるか、普通? 「ピー」というかわいい部分を使用して「ピィピィ」言わせておけばいいものの、「ぷりぃぃぃぃ↑↑」ですから。ドイツ語的な美的センスを感じます。クフゥゲルシュライバッ(迫真)
そもそも、ポケモンが自分の種族を表す名詞で鳴くっていうのも変です。イヌが「イヌッ! イヌッ!」って吠えているようなもんですからね。
もしくは、鳴き声を名前にしたとも考えられます。「ピカチュー」と鳴くからピカチュウと名付けたのであれば、ピカチュウがピカピカ言っててもおかしくないです。実際、俺たちの世界でも「ワンワン」「にゃんこ」などのように鳴き声基準で動物を呼ぶことはあります。
ただし、それは幼児語です。この説を受け入れると発見者のオーキド博士のネーミングセンスが幼稚園児並みだということになってしまいます。「こいつは"ちょぎ、ぷりぃぃぃぃ↑↑"と鳴くから”トゲピー”じゃぁぁ!」。彼は研究者としてそれで満足なのでしょうか。
ポケモンの世界の慣習(?)にも原因はあるかもしれません。彼らはなぜか自分が連れているポケモンに固有名をつけようとしません。もう20年以上長い付き合いのピカチュウをサトシはなんと呼んでいますか?
「こいつは俺の相棒、ピカチュウ!」
ピカチュウはイヌやネコと同じ、種族を表す普通名詞です。「俺の友達は人間!」って言っているのと変わりありません。妖怪人間ベムかお前は。
もちろん、ポケモンの世界にはポケモンの世界の文化がありますから、俺たちの世界の定規で測るということ自体が野暮な行為です。幸いなことにサトシは2匹以上のピカチュウを保有していないですから「サトシのピカチュウ」という言い方でほかのピカチュウと差別化ができます。所有者が自分で勝手に名前を付けないというのは、ある意味では生き物の意思を尊重しているとも考えられます。
ともあれ、そのようなむやみやたらに名前を付けないという暗黙の文化があるからこそ、オーキド博士もオーキドネズミ、オーキドエッグなどの無粋な名前を付けずに誰もがわかりやすいように鳴き声をもとにした名前を採用したのかもしれないです。
久しぶりに見たら、トゲピーがフェアリータイプなるタイプに分類されていました。俺がポケモンやってた頃はノーマルだったのに……。でも、考えてみると「ちょぎ、ぷりぃぃぃぃ↑↑」って鳴いているポケモンがノーマルなわけないですから、この分類は妥当ですね。