TALの図形配置問題を受けてみた話

どうもshigoroxです。

絶賛転職活動中の俺ですが、応募先の企業から適正検査を受けろと言われたので、受けてみました。

その中で俺が気になったのが、「将来活躍している私」を与えられた図形を配置して表現しろという謎の試験。受験者は↓の画像の課題を与えられます。

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(こちらのサイトさんより拝借しました)

ルールは大体以下の通り

・画面左側に配置されている18個の図形を右側の領域にドラッグ&ドロップしてお題に沿った絵を作成する。

・図形は貼り付けた後に回転させることができる。

・一度配置を確定させた図形を再び動かすことはできない。

・使用できる図形は10~15個

・制限時間は5分

・一度貼り付けた図形は動かすことができない。

「いったい、これで、なにががわかるの?」(かまいたち山内風)……って感じでした。

右側の領域にはあらかじめ線が引かれていますが、線の意味は不明。貼り付けられる図形は幾何学的なものが多く、まともなものを作成できるとは思えません。

解いてみた

ぽかーん、な状態のまま問題を解いてみます。一応、問題を解く前に図形の配置の仕方や操作手順について練習できる時間が用意されているので「どうやって操作すればいいかわからない」状態ではありません。

とりあえず、じっと左側の18個の図形を見てみます。俺はある図形に注目しました。

「☺」

あたかも使ってくれと言わんばかりの存在感の人間の顔の図形があります。これを使えば、とりあえず人間を表現できそうです。テーマは「活躍している私」なので、☺の横に★でも配置しておけば、無難な絵が作れそうです。

「……これは罠だな」

俺は思いました。「☺」を使ったら負けだと。「☺」は出題者の甘い誘惑なのだ。少なくとも俺は「☺」を自分のシンボルとして使うような安直な人間ではないことを試験者に伝えたいと思いました。

では、「☺」を使わずに、どう人間を表現するか。右側の領域に注意を向けます。

最も目立つのは、真ん中に引かれているフラスコ風の線です。実際の試験の絵はもう少し歪んでいて二等辺三角形ではなかったです。ともかく、俺はまた思いました。

「……これは罠だな」

先述の「☺」とこの三角を組み合わせれば、超簡単に顔と胴体が出来上がります。ですが、それで妥協しまってしまっては発想力がないと思われてしまうかもしれません。

俺が注目したのは画面下部に引かれている陰陽マークの仕切りのような曲線です。

「……これ、人間の横顔に見えないか?」

曲線の出っ張っているところを鼻として見れば、何となく人間の横顔が作れそうです。

曲線の左右に丸っぽい画像を配置すれば目になるので、良さそうです。さらに、耳として使えそうな三日月があるではないですか! 俺の腹は決まりました。

こうして、★/♥/三日月を使用して、画面下部に芸術的な人間の横顔を出現させることに成功した俺。更に、人間の髪を表現するために、三角マークを下に頂点が向くように回転させ、額となる領域に配置していきます。

しかし、ここで第二の危機が訪れます。顔を作れたはいいが、それ以外に何をやっていいかわからないのです。

俺は考えました。画面の下部に顔ができたのだから、上側の領域は「頭の中=思考」を表現しているはずだ。ならば、将来の俺が業務の中で発揮しているであろう冴え渡る思考を図形を使って表そう!

コンセプトは「四角い図形をまあるく」。四角い図形がだんだん丸い形に近づいて行く様子をグラデーションとして表現しました。具体的には四角が五角形になり六角形になり、丸になるみたいな配置を右上の領域にしました。→つければ完全に意図が伝わる配置になるはずでしたが、あまりに説明的すぎると思ったので→は自重しました。安易な人間だと思われたくないので(スチャ

ただ、それでもまだ使用した図形が指定された範囲の個数に届かなかったので、そこから先は割と適当に図形を配置していきました。

敵対関係にあった「☺」も最終的には使用しました。台形で胴体を作り、輪っかをもたせることで俺の同僚という設定にしました。輪っかを上に配置することで天使にしようかなとも思いましたが、◎を「☺」の上に配置してもそれっぽくなかったのでやめました。

そんなこんなでなんとか絵を作ることに成功した俺ですが、試験後にやはりもやもやが残ります。「……本当にこれで良かったのだろうか」。こうも思います。「他のやつはどんな回答しているんだ?」

調べてみた結果

調査の結果、自分が受けた試験はTALと呼ばれる適性検査だったことを知ります。

比較的よく知られた試験らしく、回答例のサイトがいくつか出てきました。

www.recme.jp

shukatsu2017.com

yuruazuki.com

どのサイトにも共通でいわれていることは、「☺」の使用方法です。なんでも、「☺」は必ず使うべき記号で、上のほうに配置されていれば高評価だとのこと

危なかったです。使用できる記号の数がもう少し少なかったら完全に自分は「☺」を使用していなかったです。

また、俺は図形描画問題を独創性や思考能力をアピールするための試験だと思っていましたが、実際は「やべーやつかどうか」を判断することに重点が置かれたテストだと知ります。抽象的な絵は好まれず、具象的な絵を描いたほうが好印象を与えられるらしいです。早い話、ピカソの『ゲルニカ』を書くような奴はやばそうなやつ度が高いから排除される可能性が高いとのこと

そもそもTALは加点評価のテストではなく、「やべーやつ」の入社を防ぐための足切り用のテストとして使用されることを想定しているらしいです。

TALテストの提供元の1つであるビビットジャパンさんによるテストの説明には以下のような記述があります。

企業を取り巻く環境の変化の中で、コンプライアンス重視の観点から、人的リスクへの関心も高まってきています。さらに、職場環境の変化の中で従来以上にうつ等精神疾患の罹患者が増加傾向にあり、発症後の対応だけでは追いつかない企業・組織が増え、事前段階でのその傾向や兆候把握の重要性が高まってきています。
採用適性検査「TAL」の導入により、平均14%(7人に1人)出現する「不適性者」を見出し、採用を抑制をすることで、採用による経営リスクを軽減することが可能になります。
採用適性検査「TAL」は従来のアセスメントツールでは把握できない(採用サイドが把握したい)ストレス耐性や、メンタル疾患発症傾向を精度高く測り、また面接では、見抜くことが難しいその人物の本来の特性を、採用審査時に把握し、分析ができる、適性検査が必要だという要望から生まれました。

要するに、精神的に不安定な奴やストレス耐性が低い奴を不適正者としてはじくための試験だとのこと。確かに、すぐに切れるような人やうつになりやすい人は雇いたくないと思う経営者が多いのかもしれません。

だったら、図形描画なんて「思わせぶりな」試験をしないでよ、と俺は思ってしまいますが……。絵を書けって言われたら普通芸術的なものを目指そうとするんじゃないですか。自分らしい表現をすることは悪なのですか? え? 雇われは経営者の意見に従ってればいいって? ハイヨロコンデー!

疑問点

やべーやつを見抜くテストと言っていますが、ネット上で対策が出回っている以上、やべーやつを見抜けないんじゃないかという疑問があります。

TALは「対策がしにくい」テストだといわれているようですが、どこら辺が対策しにくいのか正直よくわかりません。問題を定期的に変えているのならともかくとして、ネットを探してみると2006年に同様の図形描画問題を受験したと思われる記事が見つかり、TALのテスト内容がこの時点から変わっていないことが推測できます。

就職活動%NTTデータ

ネットに模範解答が飛び交う今、事前調査を済ませた人や2回目以降にTALを受ける人間は確実にNG回答を避けることが簡単にできてしまいます。受験者の真の能力を図りたいと思うテスト実施側の思惑と能力がなくとも好印象を与えたいと思う受験者側の攻防は受験にはお決まりの構図ですが、出題意図がわからない「図形描画問題」というだけでこの点を解決できてしまうのでしょうか。

 

提供元の1つである人総研さんはTALの特徴として「最新の脳科学の研究成果と20年に及ぶ現場の知見により、潜在的人間力が把握可能です。」と書いているのですが2006年に作られたテストだと見積もった場合、15年前の脳科学の研究成果に基づいて作られた問題だと考えるのが妥当です。

15年前の最新研究とはこれ如何に? 脳科学はこの15年間全く進歩がなかったのでしょうか?

また、「人間力を把握する」という文言も抽象的で理解できません。ストレス耐性が低かったり、ほかの人とは違う考え方を持っている人は人間力に欠けるってこと?

……まぁ、性格テストにいちゃもんを付けても仕方ないです。15年も実施を続けていれば統計的なデータがあるはずですから、主流な回答とは異なる回答を行う人かどうかの判定には役に立つはずです。

どこかのブログで「性格試験を導入することでお祈りを受ける就活生のダメージが減る」みたいなことが書かれていましたが、これはもっともな意見だと思います。バリバリの実力試験のみの選考であれば「俺は無能だと思われたんだ……」と落ち込むかもしれませんが、性格試験込みであれば「俺には合わなかった」という逃げ道を用意することができます。大企業がこのような性格試験を導入しているのも案外そんな優しい理由なのかもしれません。