細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』はなぜ失敗したのか?(公開まであと1ヶ月時点)

 

どうもshigoroxです。皆さん、もう細田守監督の『竜とそばかすの姫』はご覧になりましたか?

見てないって? そりゃそうだ。だって公開日は2021年7月16日で現在日は2021年6月15日だもん。公開までちょうど一か月あるのだから関係者以外誰も見てないと思います。俺だって見てないよ。

国内なら言わずとしれたアニメーション映画監督、細田守監督が威信をかけて挑んだ超大作『竜とそばかすの姫』! この映画は今から一か月後に公開されたのち、興行的に失敗して終わってしまいます。

まぁ、まずは予告編でも見てみましょう。

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ん? なんで見てもないのにそんなことを偉そうに言うんだって? それは、見てしまったからですよ。ある文言を……

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主演:中村佳穂さんを筆頭にそうそうたるメンツがずらりと並び……

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監督はわれらが細田守! やったね! そして、脚本を務めるのはなんと……細田守! うわああああああ\(^o^)/

俺は細田守監督の才能を固く信じている人間ですし、彼の演出家としての才能は世界レベルだと思っています。

しかしながら、物語を書く才能に関しては残念ながら「ない」と思っています。『未来のミライ』を見たときに俺はその確信を得ました。「あっ、この映画は監督が描きたいシーンをばらばらに映しているだけだ」と。

だって、『未来のミライ』を思い出してくださいよ。くんちゃんがミライちゃんにくすぐられるシーンは覚えてます。福山雅治と一緒にバイクに乗るシーンは覚えてます。いいシーンはいっぱいあります。さぁ、どんな物語でしたか?

……はい、時間切れです。誰も答えられませんでした。俺も答えられません。未来からミライちゃんがくんちゃんのところにやってきて……いろいろあった。そんな曖昧な答えしか返すことができないのではないでしょうか。

実際のところ、何を言いたいのかもさっぱりわかりませんでした。キャンパスにぶちまけられた絵の具を見せつけられて「なんか、これ、よくない?」と迫られている気分でした。部分部分はいいところが多いだけに、もったいないです。

「おいおい、過去の作品が良くなかったからって、新作がそうだとは限らないだろ?」。ごもっともな意見です。ここで新作のあらすじを見てみましょう。

自然豊かな高知の村に住む17歳の女子高校生・すずは、幼い頃に母を事故で亡くし、父と二人暮らし。
母と一緒に歌うことが何よりも大好きだったすずは、その死をきっかけに歌うことができなくなっていた。

曲を作ることだけが生きる糧となっていたある日、親友に誘われ、全世界で50億人以上が集うインターネット上の仮想世界<U(ユー)>に参加することに。<U>では、「As(アズ)」と呼ばれる自分の分身を作り、まったく別の人生を生きることができる。歌えないはずのすずだったが、「ベル」と名付けたAsとしては自然と歌うことができた。ベルの歌は瞬く間に話題となり、歌姫として世界中の人気者になっていく。

数億のAsが集うベルの大規模コンサートの日。突如、轟音とともにベルの前に現れたのは、「竜」と呼ばれる謎の存在だった。乱暴で傲慢な竜によりコンサートは無茶苦茶に。そんな竜が抱える大きな傷の秘密を知りたいと近づくベル。一方、竜もまた、ベルの優しい歌声に少しずつ心を開いていく。

やがて世界中で巻き起こる、竜の正体探しアンベイル。

<U>の秩序を乱すものとして、正義を名乗るAsたちは竜を執拗に追いかけ始める。<U>と現実世界の双方で誹謗中傷があふれ、竜を二つの世界から排除しようという動きが加速する中、ベルは竜を探し出しその心を救いたいと願うが――。

現実世界の片隅に生きるすずの声は、たった一人の「誰か」に届くのか。
二つの世界がひとつになる時、奇跡が生まれる。

 

要するに「田舎の女子高生が仮想世界で歌姫として無双していました。大きなコンサートを開催したけど、竜にじゃまされました。でも竜がいじめられてかわいそうだったから、介抱してあげました。そんなお話」
ううーん、これは……不採用! <U>という文字が長い鼻の顔文字に見えてしまうぐらい、つまらなそうです。

なぜつまらなそうなのかというと、「田舎」「仮想世界」「歌姫」「竜」といった要素すべてがばらばらに見えて統一感なさそうだからです。どう見ても自然に結びつく気がしない。あっちに行ったりこっちに行ったりな感じになるんじゃないかと。

そして、細田監督がこのとっちらかったトピックをうまく物語としてまとめられるかというと……×。華やかなシーンが作りやすい設定なので、確かに面白いシーンはいっぱいありそうな気がしますが、「……で、結局何だったの?」って感じになるのは目に見えてます。

『僕らのウォーゲーム』や『サマーウォーズ』に似ているのも観客の期待値と上映される作品との溝を生みそうで嫌なところです。だって、その2つは文句なしに面白かったし。だから、PV見てみると、確かに面白そうなんです。「こんな展開があるんじゃないか?」「あの作品とおんなじ興奮があじわえるのでは!?」……でも、賢い俺はもうだまされません。"映画の予告編の出来"と"映画本編の出来”に相関は一切ありません。マクドナルドのメニュー表の写真と実際に提供される商品が異なるのと同じ理屈です。

「歌」というわかりやすい見せ場が用意されているっぽいので、そこは素直に期待です。細田監督の作るMVとかすごくクオリティ高そう。

ところで、『デジモンアドベンチャー 僕らのウォーゲーム』で不特定多数の存在がヒーローを強くする仲間として描かれていたのが、この映画では「誹謗中傷」で竜を傷つける悪役として描かれているところに時代を感じます。

インターネットがアングラに近い時代は、不特定多数の連帯や結束が社会に光明をもたらすのではないかと謎の期待感があったわけですが、今はその真逆。減滅期というやつでしょうか。『シュガーラッシュ2』でも唐突な誹謗中傷批判みたいなのありましたし、神山監督の『ひるね姫』でもそんなような描写ありましたね。この記事含め、有名なクリエイターさんは、有象無象の批判家きどりどもにボロカス言われることが多いので、その現実を反映した形なのかもしれませんが。

ここまでべらべらと偉そうに話してきましたが、俺、まだ見ていないんですけどね。見てから語れ! はいその通りです。ただし、俺の予想だと、これはたぶん面白くならないだろうなぁ……と思いました。以上

スタジオ地図へ:細田監督の次の作品では脚本家とタッグ組ませるか、原作ものをやらせるようにしてください。お願いします。